写真上 在日ガーナ大使館正面玄関
アフリカ西部ガーナの国会は2月28日、LGBTQなど性的少数者の権利を厳しく制限する法案、通称「反同性愛法」を可決しました。法案は、同性愛行為は禁固6か月から3年、LGBTQの権利を擁護した場合はさらに厳しく、禁固3年から5年、最長で10年の刑罰が科される可能性があります。
大統領が同性婚が実現することはあり得ないと公言
成立にはナナ・アクフォアド大統領の署名が必要ですが、2019年から1年間、国連のSDGアドボケート共同議長に任命されたアクフォアド大統領は、21年には、ガーナでは同性婚が実現することはあり得ないと公言しています。
また、学術研究者のアマンダ・オドイさんが同法案は「政府間援助や他の財政支援に影響を与える可能性がある」と提起した訴訟で最高裁は「彼女の主張が十分に説得力がない」と判断して退けたのちに、同法案が国会で可決されました。
今年初めには、米国のカマラ・ハリス副大統領が、同大統領が記者会見で隣に立っている際に、アフリカでのLGBTQ+の権利の発展を強く支持すると述べ、「これは人権問題であり、それは変わりません」と付け加えるなどの発言を行っていたにもかかわらず、国会で法案が可決されました。
大統領が交代しても厳しい現状
現在2期目の同大統領は3選を禁止する憲法の規定を遵守し、今年の大統領選には出馬しない意向を示していますが、大統領が変っても簡単にはガーナでの性的少数者の厳しい状況は変わらないと思われます。
アフリカ31カ国で同性間の性行為が犯罪
他のアフリカ諸国でも同性愛者の権利を制限しています。
アフリカの31カ国では、いまだに同意の上での同性間の性行為が犯罪とされています。
ウガンダは2023年に厳格な反同性愛法を成立させており、「重度な同性愛」と定義される18歳未満の者とHIV陽性者との性交などが含まれ、死刑が導入されています。
ザンビアでは、LGBTIの人々に厳しい環境を作り出している法律、文化、政治の動きなどが相互に作用し、同性愛嫌悪の事例が増えています。
ケニアでは2023年に、同性間の性行為や同性婚を違法とするだけでなく、プライバシー、性と生殖の医療情報・サービスの利用などの基本的な権利を制限しかねない規定が盛り込まれた「家族保護法案」が議会に提出されて、人権に深刻な影響を与える恐れがあると懸念されています。
マラウイでは、同性愛を犯罪とする刑法条項は、大統領が公約に反して廃止せず、LGBTIの人々は日常的な人権侵害が生み出した恐怖と抑圧の中、敵対的な環境下に置かれ、嫌がらせと差別に晒されています。
ブルンジ大統領がLGBTQ+の人々は「石打にされるべき」
ブルンジのカトリック教徒であるエヴァリスト・ンダイシミエ大統領は、ブルンジに同性愛者はいないと主張する前に、LGBTQ+のアイデンティティの受け入れは国にとって「呪いを引き寄せる」ものだと述べ、個人的には、ブルンジでこの種の人物を見かけたら、「スタジアムに放り込まれ、石打ちにされるべきだと思う。それは罪ではないでしょう」と述べるなど堂々とヘイトスピーチを行いました。2017年、ブルンジ警察は10代の若者を含む数人の同性愛者が逮捕され、自由のために法外な賄賂の支払いを強制させられた後で、LGBTQ+の人々に対する「公式狩り」を発表するなど、人権侵害が続いています。
アムネスティ調査で、法律が差別の道具に
昨年、アムネスティインターナショナルがアフリカの12か国を調査した結果、いずれの国でも法律がLGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)の人々を差別する道具として利用されていることが判明したと発表しています。
アムネスティでは、「すべてに人々の人権を差別なく平等に認め、保護することを求める。また、同意の上での同性間の性行為を犯罪とする法律を廃止する、あるいは犯罪化することをやめる必要がある。このような法律は、国内外の人権基準や人間の平等の原則と相いれない。法の乱用はLGBTIの人々をさらに弱い立場に追い込む。地域と国際的な協調的介入が必要になることは明らか。アフリカ各国は、社会から取り残された人々と団結し、彼らの権利を擁護し、性的指向や性自認に関係なく、正義と平等が優先される世界も目指して行動を起こす時だ」と公開要請しています。
参考
時事 https://www.jiji.com/jc/v7?id=lgbt
ピンクニュース https://www.thepinknews.com/2024/03/01/ghana-anti-lgbtq-bill-condemn-un-human-rights-groups/
アムネスティ https://www.amnesty.or.jp/news/2024/0124_10239.html