犯罪被害者給付金の受給対象に、同性カップルが含まれるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は26日、「含まれる」と初めて画期的な判断を下しました。その上で、原告の内山靖英さん(49=愛知県在住)に受給資格を認めなかった2審の名古屋高裁判決(2022年8月)を破棄し、審理を高裁に差し戻しました。
「事実上の婚姻関係と同様の事情に」同性カップルを認める
犯罪被害者等給付金支給法(犯給法)は、給付対象の配偶者について「事実上の婚姻関係と同様の事情にあったものを含む」と定めています。
原告の内山さんは、14年12月、同居していた男性(当時52歳)を知人に殺害され、給付金を申請しましたが、愛知県公安委員会が17年12月に同性同士であることを理由に不支給とする裁定を出したために、取り消しを求めて提訴しました。1審の名古屋地方裁判決(20年6月)と2審判決は、日本で同性婚が認められていないことなどから、「犯給法の規定にある『事実婚』に同性パートナーは含まれない」として不支給を妥当と判断していました。
今回、最高裁が事実婚状態にあった「同性カップルを受給対象に含まれる」と判断したことによって、同性カップルの申請が拒否されることはなくなります。最高裁判決を受けて内山さんは、「同性でも犯罪被害の苦しみは同じなのに違う扱いされることはおかしいと思ってきた。今日の判決で、ようやく安心しました」と喜びを語りました。
差し戻し審では、内山さんと同居していた男性が事実婚と言える状況にあったかが問われることになります。
同性パートナーと20年生活を共に
内山さんは、同性パートナー男性とは約20年生活を共にしていました。内山さんは「物の管理が苦手な自分のために世話を焼いてくれ、頼りにしていた」。同居していた内山さんの母親のことも大切にし、話し相手になってくれていたと言います。
18年に名古屋地裁に提訴した時、内山さんは「パートナーと夫婦同然の関係だった。経済・精神的被害に、異性カップルとの間の差異はない」と訴えました。
14年に、同性パートナーが殺害された事件の刑事裁判の判決では「夫婦同然の関係」と認定されていただけに、1審、2審でパートナーであることを否定したことに、「差別だと思った」と内山さんは振り返りました。
他の230の法令解釈を見直す可能性も
弁護団によると、犯給法と同じ文言で事実婚パートナーも対象に含む法令は、厚生年金保険法や育児・介護休業法など230あります。今回の審理対象は犯給法に限られるが、最高裁が、事実婚パートナーに同性カップルも含まれると判断したことによって、他の法令でも解釈を見直す動きにつながる可能性があります。
不当な扱いを見直すきっかけに
性的少数者の当事者団体の全国組織「LGBT法連合会」神谷悠一事務局長は、自治体のパートナーシップ制度には法的効力がなく、同性カップルは社会保障が認められず、深刻な不利益を受けていると指摘。「同性カップルの権利を保障できるということが問われた重要な判決です。不当な扱いを見直すきっかけになれば」と期待を寄せました。
参考
毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20240325/k00/00m/040/319000c