LGBTQ+の若者のための自殺予防と危機介入を行う米国の非営利団体・トレバープロジェクトが1日、LGBTQ+若者の精神的健康に対する年次全国調査結果を発表し、反LGBTQ+の政策と政治的言説がクィアの若者に与えている重大な影響を明らかにしました。
いじめや差別で約半数が他州への移住を検討
全米の13歳から24歳までの1万8000人以上の若い同性愛者を対象に調査を行った結果、彼らは依然として高いレベルの精神的苦痛と自殺リスクに直面しており、いじめや差別の割合が増加していることが示されました。
報告書はまた、政治情勢が同性愛者の若者に与えている影響も強調しており、回答した若者の90%が、政治家や専門家の発言によって自分たちの幸福が悪影響を受けているとしています。
さらに、トランスジェンダー及びノンバイナリー(本人の自認する性が、男性/女性の二分法『バイナリー』に当てはまらない人)の若者の45%が、現在住んでいる地域の反LGBTQ関連の政治や法律を理由に、自分または家族が他州への移住を検討したことがある、と回答しています。
トランスジェンダーの権利が大統領選の最大の争点に
現状では、LGBTQ+の問題、特にトランスジェンダーの権利が今年の大統領選挙の最大の争点の1つになると予想されています。
トレバー・プロジェクトの国家擁護・政府問題担当上級ディレクター、ジャンソン・ウーさんは、全国の過激派議員によって推進される反LGBTQ+政策について、「こんなにも多くの家族が安全を求めて引っ越ししたいと考えていることから議員は自分たちの政策やレトリックが生み出す実際の有害な影響を真剣に考え直さなければならない。いかなる『政治的勝利』も、若者の命を危険にさらすものであってはなりません」と、警鐘を鳴らしています。
約4割が過去1年間に自殺未遂を真剣に考えた
報告書では、LGBTQ+の若者が過去1年間に自殺未遂を真剣に考えた程度(39%)を明らかにし、クィアの若者全体の12%が実際に自殺を試みたことがあると回答。この数字はトランスジェンダーやノンバイナリーの若者の方が高く、性別の多様な若者の半数近く(46%)が自殺を考えています。LGBTQ+の有色人種の若者は白人の若者よりも高い割合を示しています。
ほぼ4分の1が過去1年間に身体的な脅迫や危害を受けた
また、ほぼ4分の1が、性的指向または性同一性障害のいずれかを理由に、過去1年間に身体的な脅迫や危害を受けたと報告しています。
13歳から17歳の回答者の49%が過去12か月間にいじめを経験しており、その結果、自殺未遂率が大幅に高くなってきています。
さらに、トランスジェンダーまたは非バイナリーの回答者10人中平均7人を含む66%が不安の症状に苦しんでいると報告し、半数以上がうつ病の兆候を経験したと回答しています。
ジェンダー肯定の学校は自殺未遂率が低い
より前向きな点としては、トランスジェンダーおよびノンバイナリーの若者の54%が、自分の学校がジェンダーを肯定していると感じており、そうしている若者は自殺未遂率が低いと報告していることです。
全米の州で500以上の反LGBTQ+法案が検討されている
トレバー・プロジェクトの研究担当副代表ロニータ・ナス博士はピンクニュースに対し、この報告書は「若い同性愛者たちが直面している暗い現実に光を当てている。LGBTQ+の若者は、異性愛者やシスジェンダー(生まれ持った性と性自認が同じ人)の若者と比べて、自殺の影響を不釣り合いに受けています。LGBTQ+の若者の自殺は公衆衛生上の危機であり、そのように扱われるべき」と述べています。
彼女は続けて、「しかし、これらの問題に対処する一貫したデータにも関わらず、私たちは依然としてLGBTQ+の若者たちの権利を脅かそうとする議員や政治家たちからの容赦ない攻撃を目の当たりにしています。これまでに全米の州で500以上の反LGBTQ+法案が検討されており、そのほとんどがトランスジェンダーやノンバイナリーの若者を対象としている」と指摘しました。
あらゆる場所のLGBTQ+の若者を保護し、肯定し、擁護を
さらに「私たちの調査では、LGBTQ+の若者の驚くべき90%が、自分たちの幸福が最近の政治によって悪影響を受けていると答えています。若者の精神的健康と幸福を尊重し、支援することは政治的な議論の対象となるべきではありません。この調査は、全面的に集団的な行動が緊急に必要であることを思い出させるものであり、私たち全員があらゆる場所のLGBTQ+の若者を保護し、肯定し、擁護する役割を担っていることを思い出させます」と訴えています。
参考 PINK NEWS https://www.thepinknews.com/2024/05/02/the-trevor-project-lgbtq-politics/