写真上 名古屋家庭裁判所(ホームページより)
愛知県に住む30代の男性が、同性のパートナーと同じ名字への変更を求めた裁判で、名古屋家庭裁判所が今年3月、「2人は夫婦と同様の、婚姻に準じる関係」などとして変更を認めていたことがこのほど分かりました。
代理人弁護士によると、同性カップルを夫婦と同様の関係として変更を認めた判断は異例ということです。
異なる名字のため里子の医療機関受診や治療での不安や恐怖
男性は鷹見彰一さんで、同居する大野利政さん=いずれも仮名、30代=と同じ名字への変更を求める家事裁判を昨年11月に申し立てていました。
2人は互いを後見人として、相続などについての取り決めを記した公正証書を17年に作成。共同購入したマンションで同居し、23年からは里子を養育しています。
しかし、戸籍上は異なる名字のために里子を育てる中で、事情を知らない周囲の人から不審に思われ、性的指向のカミングアウトを強いられるのではないかといった不安や、医療機関を受診した際に家族として認められず、面会ができなかったり、治療方針を決めることができなかったりするかもしれないという恐怖感が常にあったと言います。
夫婦と実質的に変わらない生活実態、婚姻に準じる関係認める
名古屋家裁の鈴木幸男裁判長は、「2人は子育てを中心とした安定した生活を継続していて、婚姻し育児をしている異性どうしの夫婦と実質的に変わらない生活実態にあると認められ、夫婦と同様の、婚姻に準じる関係にあると言える」としたうえで、2人の名字が違うことで医療機関受診や保育園など里子を育てる中で、事情を知らない職員などに性的指向を明らかにすることが必要になったりする可能性があり、「社会生活上の著しい支障が生じている」と認めました。
意に沿わないカミングアウト自体社会生活の著しい支障と認定
そして「2人のような、性的指向が少数派に属する者は日常生活の様々な場面で差別感情や偏見に基づく不利益な取り扱いを受ける可能性があり、意に沿わないカミングアウトをしなければならない状況が生じることは、それ自体、社会生活の著しい支障になるといえる」として、名字を変更する「やむを得ない事由」があると判断しました。
家族を持つことをあきらめない選択肢もまだあるのだと
鷹見さんは、「異性の夫婦と同様だと認めたうえで、日常生活の中での支障だけでなく、『不必要なカミングアウトをしなければならない』という脅威についても家裁に指摘してもらえて涙が出るほど嬉しかったです。結婚はできていませんが、家族に一歩、近づいたと感じ、うれしいという言葉だけでは表せません。私たちを見て、家族を持つことをあきらめない選択肢もまだあるのだと思ってもらいたいです」と、同じ苦しみをもつ同性パートナーにもメッセージを伝えました。
同性婚認めない規定は憲法違反として国への訴訟も続く
判決を受けて鷹見さんは先月、役所で手続きをして、パートナーの名字に変更したということです。
2人は、同性どうしの結婚を認めていない民法などの規定は憲法に違反すると主張して、国に賠償を求める訴えも起こしていて、裁判が続いています。
参考
共同 https://nordot.app/1161097277311714264
朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASS590HZ0S59OIPE001M.html
毎日 https://mainichi.jp/articles/20240509/k00/00m/040/106000c
NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240509/k10014443741000.html