長崎県大村市議会が「夫(未届)」住民票発行に批判的決議、取り下げ

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2024.7.3

議会運営委員会に提案するも自ら取り下げ

  同性カップルに「夫(未届)」の住民票を発行した長崎県大村市で、自民党、参政党、幸福実現党などでつくる会派「みらいの風」が、市の対応を非難する決議文を議会に提出しようと試みましたが、結果、自ら取り下げることになりました。

3日の本会議に先立ち、 1日の議会運営委員会では、同会派が市の対応について、住民基本台帳法の「目的の尊重という観点からは正確性と慎重さを欠いており適切な措置とは言えない」とする決議文を提出。各会派が賛否を検討していました。本会議当日の3日早朝にも議会運営委員会が開催されましたが、結論が出ないまま本会議を迎えました。

住民票発行にストップ目的か

 この決議案について、議会関係者は「各会派での話し合いの中で、内容は随分マイルドにはなりましたが、目的は同性パートナーへの”未届け”記載の住民票発行にストップをかけること。議員の中にはパートナー制度自体についても“けしからん”、と思っている議員も少なからずいます」と話します。また、別の関係者は「公明党は当初、(市の対応を批判する)決議案に賛成していましたが、市民からの働きかけによって反対に態度を変えたようだ」と打ち明けます。

議会運営委員会、まさかの展開

誰も手を上げない議会運営委員会での採決

誰も手を挙げない議会運営委員会での採決

 昼の休憩を挟んで再開された議会運営委員会では、決議に対する賛否を採決しましたが、賛成する会派はゼロ。提出した会派すら手を挙げない前代未聞の展開になりました。委員からは「長年議員をやってきたがこんなのは初めてだ」との声が漏れます。その後、決議案提出会派の朝長英美議員が挙手。「(提出を)撤回します」との発言があり、この決議案は本会議に上程されないことが確定的になりました。集まった20人以上の市民(傍聴人)は安堵の表情を浮かべました。

市民が議会、動かした!

 こうした議会の動きには市民の行動が大きく寄与しました。本議会開会前の午前9時過ぎからはレインボーフラッグを掲げ、市民が参集。「同性愛者の権利を守れ!」と市議会前の公道でスタンディングの抗議行動を行いました。また、本議会の傍聴席には20人以上の市民らが詰めかけ、メディア各社も取材するなど関心の高さを示しました。

「ほっとした」とインタビューに応えるふたり

「ほっとした」とインタビューに応えるふたり

 
 議運終了後、住民票の交付を受けた松浦慶太さん(38)、藤山裕太郎さん(39)カップルは取材に「自分たちの住民票が(決議によって市から)取り上げられるのではないか、とこの3日間、夜も眠れなかった。朝起きると歯を食いしばっていた。強いストレスだったと思う。決議案が取り下げられたことで安心している。多くの市民の方が関心を寄せてくれ、議会に決議案を出せなくなったのではないか。アクションを起こしてくれた市民に感謝します」(松浦さん)と語りました。藤山さんも「とにかくよかったです」と安堵した様子でインタビューに答えました。

提出断念した議員LGBTは「軽いこと」発言

LGBTは「軽いこと」と発言した朝長英美市議

LGBTは「軽いこと」と発言した朝長英美市議


 

 一方、今回の決議文を取り下げた会派「みらいの風」の朝長英美議員は議会終了度、メディアのインタビューに答え、取り下げた背景について「拮抗するなら取り下げたほうがいい」と背景を話しました。また、インタビューの最後には、「こんな問題になるんですね」「軽い問題ですけどね」と話しました。記者から「当事者の皆さんは案が出てから眠れない日もあった、と話している。軽い問題なのか」と向けられると「私も眠れない時ありました」と語気を強めました。重ねて「いじめの問題など大きな問題がある。こういう問題になるとは思っていなかった。自殺の問題は大変な問題」と持論を展開しました。また、LGBTに対するいじめや当事者の自殺も深刻だとの指摘には、「そんなの知りません。聞いたことありませんから」と突き放し、議場を後にしました。(編集部)

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