写真上 26日の記者会見(NHKより)
福岡県と熊本県に住む3組の同性のカップルが同性婚の法制化を求めて国を訴えた裁判で、福岡高等裁判所は12月13日、同性どうしの結婚を認めない民法などの規定について、幸福追求権を保障した憲法13条に違反するという初めての判断を示しましたが、原告は賠償を求める訴えを退けたのは不服だなどとして、12月26日、最高裁判所に上告しました。
判決で「同性カップルの婚姻を法制度として認めない理由は存在しない」
当日、開かれた会見で原告のこうぞうさんは、判決で福岡高裁が「同性カップルによる婚姻を法制度として認めない理由はもはや存在しない」と指摘し、国に法整備の必要性を求めたことについて、「自分たちが考えていることは間違っていなかったんだという安ど感は大きかったです」と判決内容を高く評価しました。
原告のゆうたさんは「結婚できるスタートラインに立つために訴訟に関わってきた。声を上げるのを止めてしまうと今の国の姿勢では何も変わらないだろうなというのは間違いないと思うので引き続き自分のできることをやっていきたい」と語りました。
原告のまさひろさんも「法律婚をしたいという気持ちで訴訟しています。法律を作ることで人を幸せにできる立場にある人が、法律を作らない。違憲という判断も出ているのに、まだ法律を作らない。本当に何をしているんだろうと思います。私たちができるすべてを尽くしていきたい」と語りました。
国が早急に法制化することを期待して上告
また、原告のこうすけさんは「福岡高裁の判決を受けても国の姿勢は変わりません。最高裁の裁判官たちには、少数派の人権を擁護する視点に立った判決を早急にしてほしいです。それを受けた国が早急に法制度化することを期待して上告しました」と話していました。
全国5か所で6件起こされている同様の裁判のうち高裁で判決が出て上告されるのは3件目で、最高裁判所の判断が注目されます。
幸福追求権保障した憲法13条違反の画期的な福岡高裁判決
12月13日の2審の判決で福岡高等裁判所の岡田健裁判長は、「当事者が同性である場合の婚姻について法制度を設けていないことは、同性の人を伴侶として選択する人が幸福を追求する道を閉ざしてしまうことにほかならない」などとして、幸福追求権を保障した憲法13条に違反するという初めての判断を示しました。
さらに「同性カップルによる婚姻を法制度として認めない理由はもはや存在しない」と指摘し、国に法整備の必要性を強く迫りました。
そのうえで、法の下の平等を定めた憲法14条1項と個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた憲法24条2項にも違反すると判断し、「同性のカップルに異性どうしと同じ婚姻制度を認めなければ、憲法違反の状態は解消されない」と言及しました。
一方、国に賠償を求める訴えについては最高裁判所の統一判断が示されていないことを理由に退けました。
全国で起こされている同様の裁判で、2審の判決はいずれも「憲法違反」という判断になりましたが、福岡高裁判決は法整備の必要性について最も踏み込んだ異例の判決となりました。
憲法専門家も「異性カップルと同じ制度でない限り問題解決しないと画期的」
憲法が専門で同性婚の問題に詳しい慶應義塾大学の駒村圭吾教授は、NHKのインタビューに対し、憲法13条に違反するという判断について、「13条は非常に抽象的なため、これまで裁判所は判断に慎重だった。しかし今回、婚姻が非常に重要で根源的な営みだということを根拠に、幸福追求にとって重要なことは言うまでもないとした。かなり突っ込んだ個性的な判決で、驚きを持って受け止めている」と話しました。
国会への強い姿勢も現れているとしていて、「今の民法の制度から同性愛者を除外していることが憲法違反で、異性カップルと同じ制度でないかぎり、問題は解決しないともしていて非常に画期的だ。国会がほぼ何もしていない状況への疑念や怒りが感じ取れる」と話していました。
そのうえで、「裁判所の中でも権威が高い高裁で違憲判決が続いていることで、今後の最高裁の判断に影響する可能性がある」としています。
林官房長官「国民の意見や国会の議論を注視」
林官房長官は12月13日の判決が出た午後の記者会見で「現段階では確定前の判決であり、ほかの裁判所に同種訴訟が係属していることから、その判断も注視していきたい。同性婚制度の問題は、親族の範囲やそこに含まれる方々の間にどのような権利義務関係などを認めるかといった、国民生活の基本に関わる問題であり、国民一人一人の家族観とも密接に関わるものと認識している。国民各層の意見や国会における議論などを引き続き注視していく必要がある」と述べています。
写真上(なるほどゼミ 年末スペシャル NHKより)
同性のカップルに結婚が認められないのは憲法に違反するとして国に賠償を求める集団訴訟は、全国5か所で6件、起こされています。
写真上(なるほどゼミ 年末スペシャル NHKより)
3月7日(名古屋高裁)、3月25日(大阪高裁)で判決予定
1審では判決が出そろい、「憲法違反」が2件、「違憲状態」が3件、「合憲」が1件と判断が分かれました。
2審の判決は今回が3件目で、これで1件目の札幌高裁、2件目の東京高裁に続いて、いずれも「憲法違反」の判断となりました。
今年3月には名古屋高裁(7日)と大阪高裁(25日)でそれぞれ判決が言い渡される予定です。