写真上 大阪高裁 (裁判所HPより)
北アフリカのチュニジアで同性愛を理由に迫害されたとして来日した30代の男性を難民認定するよう命じた大阪高裁判決について、鈴木馨祐法相は14日の記者会見で、被告の国が上告を断念したことを明らかにし、国の敗訴が確定しました。13日が上告の期限でした。
鈴木法相「上告の事由となりえず」断念
鈴木法相は上告断念の理由について、「不服申し立てが受け入れられなかった点は遺憾だが、上告は憲法違反や法令の解釈に関する重要な事項を含むものに限られており、判決内容を慎重に検討し熟慮した結果、これらの事由があるとまでは言い難かった」と述べました。
1審の「不認定処分取り消し」に国側が控訴
判決などによると、男性はイスラム教の国出身で、法律で同性との交際が禁止されています。別の男性との交際を知った家族に監禁されたり、車でひかれそうになったりして身の危険を感じ、2019年12月に来日し、難民申請したが認められず、提訴しました。昨年7月の1審・大阪地裁判決(徳地淳裁判長)は、同性愛を理由とする迫害も難民に該当し得るとした出入国在留管理庁の「難民該当性判断の手引き」に照らすなどし、不認定処分を取り消したため、国側が控訴していました。
2審「同性愛理由に拘束や迫害受ける恐れあると評価すべき」
2審の大阪高裁判決(三木素子裁判長)は、判決理由で「帰国すれば同性愛であることを理由に、拘束や迫害を受ける恐れがあると評価すべき」と指摘しました。
男性は2審の判決後、大阪市内で記者会見し、「心身ともにしんどかった。普通の暮らしを送りたい」と語りました。
鈴木法相 「個別の事案ごとに適切に審査していきたい」
また、鈴木法相は14日の記者会見で、「前提として、1審判決ではLGBTであることのみを理由に政府による迫害を受ける恐れがあるとしたことや、原告が非国家主体から迫害を受けており、当該国の効果的な保護を受けることができないとされたことに不服があったため控訴した」と説明。また、「一般論として、当該国にLGBTとしての特定の行為を処罰することを目的とする法令が存在するというだけで、我が国で難民と認められるものではない。この点は今後も変わらない。引き続き個別の事案ごとに適切に審査していきたい」と付け加えました。