引用元:「マイ・ビューティフル・ランドレット」公式サイト
以前 このコーナーで「ウーマン・トーキング」を取り上げた際、イギリス人イケメン俳優について触れましたよね。あの記事を書いてから思い出したのですが、私は学生のころから割とイギリス映画を好んで観てきた気がします。
“きっかけは何だっけ?” と記憶をたどって行き着いたのがダニエル・デイ=ルイス。私にとってイギリス人イケメン俳優といえばルパート・エヴェレットでもヒュー・グラントでもなくダニエル・デイ=ルイスなんです。
アメリカのアカデミー主演男優賞を3回も受賞した名優で、「ラスト・オブ・モヒカン」「父の祈りを」「NINE」などでの演技も魅力的でした。そんな彼の出世作が今回紹介する「マイ・ビューティフル・ランドレット」です。日本公開が1987年なので36年も前の作品なんですね・・・
ロンドンの若者をセクシーに演じるダニエル・デイ=ルイス
1980年代のロンドン。パキスタン移民の息子オマールは酒浸りの父の面倒を見ながら失業保険で暮らす青年です。将来を案じた父の紹介で手広く事業を展開する叔父の下で働き始めます。叔父に古いコインランドリーの管理を押し付けられたオマールが、偶然再会した白人の幼馴染ジョニーとコインランドリーを高級感ある店に再建させるという物語。このジョニーを演じるのが若き日のダニエル・デイ=ルイスです。
パンクっぽいファッションの着こなしが実に見事なんですよ! ジョニーはオマールと恋に落ちるのですが、将来の夢を語るオマールの頬にいきなり手を当ててキスしたり、ハグした時に首をペロっとなめる姿はかなりセクシーです。
ただし作品自体にボーイズラブ的な甘さはなく、人種差別や格差社会など2020年代の今にもつながるシビアな内容です。移民の中にはオマールの叔父のようにビジネスで成功を収めた者もいますが、白人の労働者層の目には“俺たちが使うために連れてきた連中が職を奪った” と映り、ヘイトデモやヘイトクライムの標的にされてしまいます。実はジョニーも反移民のデモに参加していて、それをオマールが目撃したために疎遠になったという過去があります。差別をバネにのし上がったパキスタン移民は必要以上に一族の結束を深め、貧しい白人を密かに見下しては留飲を下げている状態。ちなみにオマールの叔父は白人女性を愛人にしています。
愛し合うオマールとジョニーですが、商才のあるオマールがジョニーを雇う形になったことで、二人の関係が歪んだ格差社会の縮図になってしまうのも皮肉な展開です。とはいえイギリス生まれのオマールにとってパキスタンは祖国ではありません。帰属意識を持てるはずもなく、故郷を知る親戚から“自分の国のない どっちつかず” と言われてしまいます。監督のスティーヴン・フリアーズは複雑なバックグラウンドを持つ登場人物たちをドライなタッチで描いていきます。
ティーンエージャーだった私はこの作品にハマってしまいました。当時はネット配信なんて便利なものはなく、ビデオ化されるにも数年待たなければならない時代。だから公開期間が終わったら二度と観られない・・・と、新宿にあったシネマスクエア東急に通い詰めたものです。あまりに頻繁に出かけるので、親に“彼女”ができたと勘違いされたのも懐かしい思い出。
これ以降 主にミニシアター系の作品で映画の楽しさに触れ、イギリスをはじめとした外国への憧れを募らせました。それが字幕翻訳家になる遠因になったという気もします。
なぜか初の海外旅行はアメリカでしたが・・・(笑)
尚 本作品は2019年にデジタル・リマスタリングされ、美しい映像でスクリーンによみがえりました。
1985年製作/イギリス
原題:My Beautiful Laundrette
配給:ファインフィルムズ