公判後、報告集会に臨む原告と弁護団。左から3人目が西川さん、4人目がただしさん

「結婚に類する制度」で差別は無くならない

 続いて、ただしさんが裁判長の前に立ちます。同性パートナーと宮古島で小さな宿を経営しながら2匹の犬や猫と一緒に暮らしています、と語り始めました。地裁判決の内容について、「結婚に類する制度」との言葉が出たことに「僕たちは、ただ、愛する人と結婚したい、家族になりたいと言っているだけ」と疑問を呈します。

 「結婚に類する制度」を「準結婚」だとして、「結婚できる人と、結婚に類する制度しか許されない人との差異はいったいなんなのでしょうか、理由があれば論理的に説明して欲しい」と問いかけます。

 また、LGBT当事者の若者調査で自殺念慮(自殺を考えた)や自殺未遂が高いことを指摘し、「結婚できる人と、準結婚しか出来ない人がいるという差別意識が当たり前にはびこっている状況では、いじめや差別はいつまでもなくなりません。法律が平等に扱わない限り、社会は変わらない」と訴えます。口頭弁論の最後には「特別な権利を求めているわけではありません」「自分の愛する人と結婚したい そんな当たり前の夢を性的指向や性自認にかかわらず、誰もが思い描くことのできる社会を願っています」と締めくくりました。

 裁判長は二人の姿をまっすぐ見つめながら、時に頷きながら聞いています。左右の裁判官が資料に目を落としたり、別の方向を見てボケっとしているのとは対照的にとても良い雰囲気です。

なぜ、婚姻に代わる、登録パートナー制度ではダメか?

 今回のテーマの一つは、なぜ、同性婚と類似の制度(登録パートナー制度)ではダメか、ということでした。5つの裁判所の判決の中には、同性婚でなくても国版の登録パートナー制度の創設を連想させるような判決もあり、注意が必要です。

 確かにヨーロッパではフランスのパックス制度(同性異性を問わず使える)のように結婚に類似の制度を作り、その後、同性婚を認めるという傾向もありましたが、それも昔の話です。そしてヨーロッパは結婚に際して教会の許可状が必要な場合もあり、日本の婚姻制度と違うなどの事情がありました。その後、婚姻とは別の制度を作った国の当事者からは「二級市民扱いだ」の声が広がり、同性婚として正式に結婚が認められた経緯もあります。だとすると、今さら、パートナー制度を新たに作るのは時代錯誤ともいえるでしょう。

 今回の同性婚訴訟の事務局長を務める加藤慶二弁護士は、LGBT.jpの取材に「判決で登録パートナー制度で良い、となれば、国会で議論することになりますが、相続制度は認められるのか、(国際結婚の場合の)配偶者ビザの制度はどうするのか、など2人の関係に付与する権利義務をどこまで認めるかを議論していくことは困難を極めると思います。LGBT理解増進法の審議のときですら、まともな議論がなされなかったからです。また、制度が出来ても不十分で、おそらくそれに対する訴訟が再び提起される可能性が高いと思います」と解説します。

 確かに「パートナー制度でも、ないよりはまし」という考えもあるかもしれません。しかし、結婚とは「1500以上もあると言われる社会保障に守れれながら安心して暮らしていける(こと)」(ただしさんの意見陳述より)だとすると、1500の全てについて国会で議論し、それを付与するのか、しないのか、また、その正当な理由は何なのか、の説明はできないでしょう。やはり、原告の主張するように「婚姻の平等(=同性婚の実現)」を求める正当性がはっきりします。

 裁判の資料はcall4などのサイトで見ることはできますが、リアルでの裁判傍聴は全く違いました。当事者の皆さんの緊張感と使命感、それに向き合う裁判官。当事者をサポートする弁護士の連携などなど、資料やニュースでは分からない空気を感じることができます。改めて、原告の皆さんと支える弁護団をリスペクトしました。ぜひみなさんも傍聴してみてはいかがでしょうか。次回期日は2024年4月になりました。(編集部)

<リンク>
CALL4「結婚の自由をすべての人に訴訟資料」
MARRIAGE FOR ALL JAPAN 結婚の自由をすべての人に サイト
報告集会の様子<必見です!>(You Tube)

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