引用元:CJ Entertainment Japan 公式YouTube
昨秋 ミュージカル「天使にラブ・ソングを ~シスター・アクト~」を観劇しました。ウーピー・ゴールドバーグ主演のヒット映画を舞台化したもので、ロンドンやブロードウェーに続き、日本でも2014年から繰り返し上演されています。生の舞台の迫力に、コーラスの楽しさを再認識しました。
舞台の余韻に浸りながら、ふと思い出したのが韓国映画「ハーモニー 心をつなぐ歌」です。「天使にラブ・ソングを」は修道女の聖歌隊でしたが、こちらは女子刑務所の受刑者たちによる合唱隊を描いた実話ベースの作品です。
号泣必至! 歌声がつなぐ家族の愛のカタチ
夫を殺した罪で女子刑務所に服役中のジョンへ。犯行時に妊娠していた彼女は刑務所内で出産しました。韓国では受刑者が出産した場合、生後18ヵ月まで刑務所内で育てることができるのです。愛くるしい息子ミヌは受刑者たちのアイドル的存在で、温かく見守られながら成長していました。
ある日、慰問に来た合唱団に感動したジョンへは受刑者たちの合唱団結成を思い立ちます。彼女は早々に刑務所長の許可を取り付け、元音大教授で同房の最高齢受刑者ムノクに指導を頼み込みます。その後はオーディション風景、練習、刑務所内でのお披露目・・・とストーリーが展開していきますが、このあたりは「天使にラブ・ソング」をほうふつとさせます。登場人物のキャラクターも含め、割とよくある王道パターンなので理屈なく楽しめます。
ただし受刑者は痛ましい境遇の者ばかりです。DVから自分とお腹の子の命を守るため夫を殺してしまったジョンへ。夫とその浮気相手を車でひき殺し、死刑判決が下っているムノク。自分をレイプしようとした義父を殺した新入りのユミ。男に虐げられた受刑者が多いのも特徴です。中でも印象的なのがムノクです。同房の受刑者からは母のように慕われていますが、自分が犯した罪のせいで実の娘からは絶縁されています。この役を演じるナ・ムニが本当に素晴らしい! 包容力や意志の強さ、そして時に見せる弱さのバランスが絶妙で、もうひとりの主役ともいえる存在感です。
半年後 ジョンへにミヌとの別れの時が訪れました。彼女は息子の将来を思い、養子縁組を申請していたのです。自ら決めたこととはいえ、やはり別れがたいものですよね。普段はお調子者で明るいジョンへなだけに、こちらも感情移入して胸が痛くなります。喪失感から抜け殻のようになった彼女を救ったのは合唱団のメンバーたちでした。
4年が過ぎ、女子刑務所合唱団はクリスマスに行われる全国女声合唱大会に招かれます。しかも家族との面会が認められるというプレゼント付き。そんな中、韓国で13年ぶりに死刑執行が行われるというニュースが入ります。世間の注目が集まる中で迎えた本番当日、彼女たちに何が起きるのか・・・ ここからラストまではぜひ本編で確かめてください。
実際には1997年以降 韓国では死刑執行がなく、実質的に死刑廃止国と見なされているそうです。(*1) 作品はその是非を問うものではありませんが、深い感動とともにシビアな現実にも目を向けさせてくれます。
私は劇場でこの作品を鑑賞しました。実は目当てだった別の作品が満席だったので、こちらに切り替えたんです。そんなわけで特に思い入れもなく観始めたのですが、後半はほぼ泣きっぱなし。思わぬ掘り出し物を見つけた気分でした。このレビューを書くに当たり久しぶりに鑑賞しましたが、やっぱり号泣でしたね(笑) 皆さんもハンカチやティッシュを用意してご覧ください。
*1 『韓国は完全なる「死刑廃止国」となるのか』 エコノミストOnline 2022.7.19
2010年製作/韓国
原題:Harmony
配給:CJ Entertainment Japan