写真上 質問する石川大我議員(参議院ネット中継より)
小泉龍司法務大臣は、「多くの国民が理解をしたうえで同性婚が認められた場合には、間違いなく幸せの量は増える」とし、同性婚の法制化について、法務省内部で「予断を持たずに、国民の受け止め方、価値観、ライフスタイルの変化、諸外国の動向、訴訟の動向、地方のパートナーシップの動き、国会の超党派議連のない動きなどの情報に積極的に触れていこう、動きを把握していこう、一緒に考えていこうという気持ちで、深まった部分の議論をしているところ」と23日の参議院法務委員会で答弁しました。同性婚を認めない現行法制について、札幌高裁が3月に「違憲」判決したほか、計6地裁判決で、違憲が2,違憲状態が3、合憲が1と判断されている中での法相の答弁は、質問した石川大我(立憲)議員の粘り強い質問に省内議論を打ち明けることになりました。
写真上 答弁する小泉法相(参議院ネット中継より)
同性婚が法制化されている国へ優秀な人材が流出する影響は
現在の日本の国会で唯一、ゲイをカミングアウトして当事者の立場からLGBTQや人権問題に取り組んでいる石川大我議員(立憲)の質問に答えたものです。
石川議員は、かつて、岸田首相の荒井秘書官が同性カップルについて、「隣に住んでいたら嫌だ、見るのも嫌だ」と発言し、「同性婚を認めたら日本を捨てる人も出てくる」などと語ったことは公の立場、影響力にある人の人権蹂躙(じゅうりん)発言として許しがたい、更迭は当然との考えを示しました。その上で、本来、同性婚が法制化されていれば日本で働いて納税して暮らしていけるのが、逆に法制化されている国へ定住し、優秀な人材が流出したり、海外から日本に仕事などで赴任する場合、法制化されていない為に制度がある台湾など、他の国を選ぶなど、経済的な悪影響に対しての大臣の見解を求めました。
日本人女性がカナダ政府から難民認定受けたのは迫害に根拠あったから
小泉法相は、「一番自由な、リベラルなそういうルールを多国籍企業が入れて、優秀な人材を確保しなければ国際競争で生き残れない、というグローバルな動きも1つの大きな流れはある」と答えました。
石川議員も同じ認識としたうえで、18日付の朝日新聞(参照)が、日本人女性カップルがカナダから難民認定を受けたこと、カナダの難民移民委員会が、彼女たちがカミングアウトしたことで、日本で家族や地域、職場などで迫害を受けて住み続けることへの恐怖感を覚えたことは十分根拠があるとして、難民認定したことへの認識を問質しました。
仏や台湾と価値を共有すると述べながら同性婚問題は残念で、国益損ねる
これに対して小泉法相は、「同性婚に関する様々な動きを我々はしっかりと注視して、諸外国での難民申請、認定の例も我々が注視するべき多くの事象の1つ、大きな要素と認識しています」と答えました。
石川議員は、さらに岸田首相が訪仏した首脳会談で、「価値や原則を共有する特別なパートナーであるフランスとの関係を重視している」と発言。林外相も台湾の頼清徳新総統就任への祝辞で「台湾は基本的な価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナー」と述べていることを挙げ、同性婚を法制化しているフランスと台湾への価値の共有と述べながら、日本の同性婚の問題はむしろ、ロシアや中国、北朝鮮といった国々と歩調を合わせているかに見えてしまう、残念で、国益を損ねていることをどう考えているか質しました。
国民の70%以上、若者の90%以上が賛成の現状、反対は一部の自民党
小泉法相は、「国民もそういった国際的な事情も目に映り、それを理解し、判断が積み重ねられていくと思います」としながら、「ただ、家族法制に関するこの婚姻の問題については、社会の基礎をつくる、日本人の家族観も含めて、国民の認識の変更を要する問題で、国民の理解が必要で、国民がどう反応していくのか、より積極的な姿勢で様々な情報に触れていく、そういう心構えで対応していく」と一部の自民党タカ派に配慮した消極的な答弁となりました。
そのため、石川議員が「同性婚法制化で不幸になる人はいない、幸せになるという人が増えるということをどう考えるのか。また、70%以上、若者では90%以上の国民の皆さんが(同性婚法制化に)賛成しています。自民党支持者の皆さんの中でも大勢の方が賛成している現状で、まさに受け入れる過程にあるのは一部の自民党の方たちの問題」と質しました。
同性婚が認められれば幸せの量は増える、その方向性は正しい
石川議員の質問に対し小泉法相は、「多くの国民が理解したうえで同性婚が認められた場合には、間違いなく幸せの量は増えると思う。幸福になる方が増えるという方向性は、それは正しいと思いますが、扶養の義務とか相続とか、縁戚関係の中で影響を受ける方がいる、基本法制としてはその過程をしっかり踏んでいくことも需要な課題」と、具体的な課題に言及しました。
同性婚の法制化が合憲の可能性想定していない、繰り返す
石川議員は、衆議院法制局が憲法24条1項と同性婚との関係について、「日本国憲法は同性婚を法制化することを認めているとの許容説は十分成り立ち得る」との答弁を得ているとして、一般論として、現行の婚姻制度の中に同性同士のカップルを組み入れることは可能か、質しました。
小泉法相は、同性婚の導入を許容しているかどうかは「見解が分かれている」として、現在、法務省の考えも想定していない状況を説明しつつ、札幌高裁判決は「現状の条文のまま読めるよという判決で、論理的にはそういうこと(同性婚)も概念的には含まれる」との解釈を示しながら、同性婚の法制化が合憲である可能性は「否定も肯定もしない、想定していないところまでは申し上げられる」と肝心な法制化についてはこれまでの繰り返し答弁に終始しました。
憲法に想定してはいけないという意図は全く入っていない
石川議員が、1947年生まれと日本と同じ年にできた台湾では、最高裁にあたる大法官会議が同性婚を認めないのは憲法違反としていることを挙げ、制定当時と、新しく生まれてくる人権、プライバシー権など、時代と共に変わりえるとして「制定当時からの想定していない」他人事答弁はやめていただきたい、と質すと、小泉法相は「国民の基本的価値が変遷すればそれに従って憲法というものも変わってくるのは万国共通で、日本国憲法も同じ。想定されていないが、想定してはいけないという意図は全く入っていないので、(想定する)議論を積み重ねていって、想定するべきという議論でまとまった時には、では憲法をどうするかという議論に入っていくことになる」と述べました。
省内で積極的に深まった部分の議論をしているところ
さらに、石川議員が、政府が家族の根幹にかかわるとする子どもの共同親権については、母親アンケートで20%の賛成で強引に進めているが、国民の7割、若者の9割以上が賛成している同性婚を進めないのは、「自民党政権の中にある、同性婚を絶対やっちゃいけないんだという強い意志を感じていますか」と問質された小泉法相は「特段そういう意思は感じていない。予断をもっていない。むしろ、国民の様々な受け止め方、価値観、ライフスタイルの変化、諸外国の動向、訴訟の動向、地方のパートナーシップの動き、国会での超党派議連の動きに対して、もっと積極的に情報に触れていこう、一緒に考えていこうと、この問題について、今、深まった部分の議論をしているところ」と法務省内部での議論状況を明らかにしました。
参考