長崎県大村市が男性カップルに続柄「夫(未届け)」記載の住民票交付に反響続々

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写真上 長崎県大村市庁舎 (大村市HPより)

長崎県大村市が5月2日に、市内在住の男性同性カップルに対し、続柄欄に「夫(未届け)」と記載した住民票を交付したことが分かり、5月28日に当事者が記者会見して喜びの声を語り、市長も同日、「裁量の範囲内でできる限りのことをした」と窓口の対応を評価しましたが、翌29日には、京都府与謝野町長が会見し、大村市の対応を「勇気ある判断だ」と支持し、同町でも同性カップルから同様の対応を求められた場合、積極的に受け入れる意向を示しました。同日はまた、栃木県鹿沼市長も、当事者の希望があれば、住民票の続柄を「夫(未届け)」「妻(未届け」と記載して交付する対応を7月から始めると発表、鳥取県倉吉市や福岡県古賀市、東京都杉並区なども導入を検討するなど、反響が続々と広がっています。

当事者「大村市にやってきてよかった」喜ぶ

長崎県大村市で続柄欄に「夫(未届け)」と記載した住民票を交付されたのは今年3月から大村市で暮らす松浦慶太さんと藤山裕太郎さんの同性カップルで、2人は2018年から付き合い始め、藤山さんが住む尼崎市に松浦さんが引っ越して同棲を始め、2020年に尼崎市でパートナーシップ宣誓を行い、23年6月には市内のLGBTQフレンドリーな神社で神前結婚式を挙げました。藤山さんは出身地である長崎県諫早市へのUターンを考えるようになりましたが、諫早市には同性パートナーシップ証明制度がなかったため、近くの同宣誓制度がある大村市に2人で引っ越しました。雇用保険の関係で事実婚であると認められると引っ越し費用サポートが倍くらい違うという指摘もあり、ダメ元で続柄を「夫(未届け)」にできないかと市民課に相談。当初、「戸籍の関係で難しい」と断られたものの「戸籍の関係は事実婚の異性カップルも同性カップルも同じでは。正式な理由を教えてください」とお願いしたところ、市役所内で協議した結果、認められたということです。結果、松浦さんが「世帯主」、藤山さんが「夫(未届け)」と表記した住民票が発行されることになりました。
28日の記者会見で松浦さんは「パートナーシップ証明を受けた時よりうれしかった。」、藤山さんは「大村市にやってきてよかった。これからもそういう自治体が増えたらいいな」と喜びを語りました。

園田大村市長は「制度設計の変更は国で議論」促す

同日、記者会見した大村市の園田裕史市長は「あくまで『内縁の夫婦』に準じるという意味で自治体事務の裁量の範囲内で判断した」と窓口の対応を評価する一方、「社会保障や相続など、様々な制度に対する広い理解が得られるという意味では大きいが、制度設計の変更については、国で議論していくべき」と国の制度導入への議論を促しました。

山添京都与謝野町長は「積極的に受け入れる」

同じ29日に記者会見した京都府与謝野町の山添藤真町長は、大村市の対応を「勇気ある判断だ」と評価し、同町でも同性カップルから同様の対応を求められた場合、積極的に受け入れる意向を示しました。与謝野町は「パートナーシップ宣誓制度」も年内に導入する考えで、性的マイノリティの社会的課題に「しっかりコミットしていきたい」とも語っています。

佐藤鹿沼市長も7月から住民記載開始を発表

栃木県鹿沼市の佐藤信市長も同日の記者会見で、当事者の希望があれば、住民票の続柄を「夫(未届け)」「妻(未届け)」と記載して交付する対応を7月から始めると発表。「多様性を認めるのが当たり前の社会につなげたい。先行して制度を発表した自治体が孤立しないよう世論に訴え、国を動かしたい」と述べています。同市では、5年前に栃木県では初めて「パートナーシップ宣誓制度」を導入し、2022年には「パートナーシップ&ファミリーシップ宣誓制度」へと拡充、さらに制度の拡充を目指す中で、住民票の記載で同性カップルの続柄を表記する方法を模索してきたとしています。

岸本杉並区長も導入を「前向きに検討」

東京都杉並区の岸本聡子区長も6月7日の区議会で、「様々な影響が考えられるが、これらを乗り越えて希望する当事者に寄り添っていきたい」と同様の記載の導入について、前向きに検討する考えを明らかにしました。昨年4月に同性パートナーシップ証明制度を含め、「性の多様性尊重条例」を施行し、当事者の声や先行自治体の取り組みを踏まえ、同性パートナーの続柄を希望する制度利用者に「縁故者」を記載できるようにしています。岸本区長は、大村市の取り組みを「国による同性カップルの婚姻制度の整備が整っていない中で、当事者の心情に寄り添ったもの」と評価しました。
岸本区長は「新しい状況に多くの自治体が広域的に一歩を踏み出す必要がある。同性パートナーシップ制度がある都内13区と意見交換し、制度との整合性を図りながら検討していく」と述べています。

参考
長崎新聞 https://nordot.app/1168365716399882625?c=39546741839462401
毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20240529/k00/00m/040/245000c
NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240528/k10014462711000.html
東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/332133

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