写真上 神奈川弁護士会館
神奈川県弁護士会(岩田武司会長)は6月26日、収容中のトランスジェンダー女性にホルモン療法を受けさせなかったのは人権侵害に当たるとして、横浜拘置支所(横浜市港南区)に対して、今後は治療の経過や専門的知見を十分に踏まえて、医学的な措置の必要性を判断するよう同13日に勧告したと発表しました。
接種できず、下腹部の痛みや息苦しさや思考力低下などの症状も
勧告書によると、人権救済を申し立てた40代のトランスジェンダー女性は、幼少期から男性とされることに違和感を覚え、1995年5月ごろからGID(性同一性障害)学会認定医により処方された女性ホルモン剤の注射をするようになり、2002年2月には睾丸摘出手術を受け、その後もホルモン剤注射を継続していました。21年2月に逮捕された都築警察署で、ホルモン療法を受けさせてほしいと頼むと、処方された病院へ確認後、プレマリンという錠剤を1日3錠ずつ支給されましたが、横浜拘置支所に移送されて以降、「ホルモン治療はやっていない」として受けさせてもらえず、理由を尋ねても「不開示」とされました。
女性は、ホルモン剤が接種できないことの影響で、下腹部の痛みや喉のつり、息苦しさ、気力、思考力、記憶力の低下をはじめ不安やイライラなどの症状が出てきたそうです。
拘置所が主治医に確認せずホルモン療法しない治療方針を決定
神奈川県弁護士会は、同人権擁護委員会の照会に横浜拘置支所は、申立人が性同一性障害の診断を受けたことは「認識していた」と回答しながら、「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」(2018年)で求められるGID学会認定医であった主治医に確認することなく、ホルモン療法を行わない治療方針を決定し、被収容者へのホルモン療法に関する2016年1月19日付の首相答弁書の「医師(GID学会認定医=当サイト注)が、、、ホルモン療法を行う必要があると認める場合」の判断基準を適切に行ったとは認められないとしました。
適切な医療受ける権利、性自認尊重される権利を侵害
これらが、申立人の必要かつ適切な医療を受ける権利(憲法第13条及び25条)及び自己の性自認を尊重される権利(憲法13条)を侵害するものとして、人権侵害に当たると言わざるを得ないとして、今後、トランスジェンダーの在所者がホルモン療法など医学的な措置を求めた場合には、従前の治療経過につき主治医に対し確認したり、性同一性障害について特に専門的な知識及び経験を有する医師の意見を仰いだりするなどして、従前の治療経過や専門的知見を十分踏まえて、当該医学的な措置の必要性を判断するよう勧告しました。
参考
神奈川県弁護士会 https://www.kanaben.or.jp/profile/gaiyou/torikumi/jinken/kankoku/index.html
朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASS6V3QV2S6VULOB00GM.html