写真上 左がトム・デイリー選手 オリンピック公式サイトより
東京五輪の飛込競技で金を含む2つのメダルを獲得した英国の同性愛者トーマス(トム)・デイリー選手は7月26日(現地時間)、パリオリンピック開会式で英国選手団の旗手をローイング女子のヘレン・グローヴァー選手と共同で務めました。
今回のパリオリンピック開会式でLGBTQが旗手を務めたのは、英国のトム選手を始め、難民チームのCindy Ngamba(カメルーン出身)、フィリピンのNesthy Petecio、トリニダード・トバコのMichelle-Lee Ahye、ベネズエラのYulimar Rojasの5人です。
オスカー賞脚本家と結婚、2人の子を育てる「編み物王子」
英国オリンピック委員会(BOC)の公式Xでは、『タイタニック』の名シーンを再現した、両手を広げるトムをヘレンが後ろから抱きかかえる様子を写した画像が投稿されていました。映画とは男女が逆なのもゲイテイストと言われています。トム選手のインスタグラムにもその様子の画像が掲載されていますが、「テレビで見ている息子たちに小さなハートを送ったんだ」とトム選手は片手でハートの半分を作り、自宅で息子さんがもう1つのハートを作っている画像もアップされています。
トム選手は、『ミルク』でオスカー賞に輝いた脚本家のダスティン・ランス・ブラックと2017年に結婚し、現在は2人の男の子を育てています。
またトム選手は、東京五輪の際に、プールサイドで編み物をする姿がテレビカメラに映り、「編み物王子」としても話題になりましたが、今大会でも編み物は健在で、五輪公式インスタでも東京五輪とパリ五輪で編み物をするトム選手の姿を比較した画像が投稿されるなど話題に上がっています。
パリ五輪で5つ目のメダル獲得
トム選手は、14歳で五輪デビューして以来、ロンドンで銅、リオで銅、東京で金と銅と4つのメダルを獲得。東京大会後、2年間飛込から遠ざかっていましたが、長男ロビーさん(当時6歳)が、「五輪に出場する姿を見たい」と言ったことから復帰を決め、パリ大会出場となりました。個人種目出場はないため、唯一メダル獲得の可能性をかけた7月29日の男子シンクロナイズドダイビング10M高飛び込みでノア・ウイリアムズ選手とのペアで見事銀メダルを獲得し、自身5つ目のメダルとなりました。
同性愛違法のカメルーンから難民選手
一方、難民選手団で旗手を務めたLGBTQのシンディ・ヌガンバ選手はカメルーン生まれで、幼少期に父のいる英国のマンチェスターに移住し、過去に拘束されて強制送還されそうになった際、同性愛者だとカムアウトし、難民認定されました。カメルーンでは、同性愛行為は違法とされ、最高5年の懲役刑を科される可能性があります。
ヌガンバ選手は、移住直後は太めの体形や英語の発音でからかわれたこともあり、苦労しましたが、15歳でボクシングに出会い、3度も英国でチャンピオンに輝くなど頭角を現し、パリ五輪出場を果たしました。彼女は、「私の物語と旅が、難民だけでなく、何かを成し遂げようとしている全ての人々の刺激になるといい」と語っています。