写真上 パリ五輪開会式 IOC HP より
セーヌ川とエッフェル塔などを舞台にしたパリ五輪の開会式の中で、ドラァグクイーンや大勢のクィアの人々が橋の上でファッションショーの後、DJをしていたバーバラ・ブッチさんのところに集まり、ギリシャ神話の神々による『祝祭』を描いたシーンが、ダヴィンチの『最後の晩餐』を侮辱する演出だとしてカトリック教会と極右の政治家らが強く反発し、演出を務めたトマ・ジョリーさんに対してインターネット上で殺害予告が行われたことに対して、パリ検察が捜査を始めたことを明らかにしました。また、DJのバーバラ・ブッチさんも自身のインスタグラムで、嫌がらせを受けており、弁護士を通じて警察に通報したことを明らかにしました。
ジョリーさんはゲイで、ブッチさんはレズビアンです。
『包摂』のメッセージ、分断を和解させるセレモニーにしたかった
開会式の演出を務めたトマ・ジョリーさんはBFMTVのインタビューで「『最後の晩餐』には着想していません。ギリシャ神話の神々による祭りを描いています。あれは『祝祭』のシーンで、ディオニュソスはギリシャ神話のお祝いの神だからテーブルにやってきたのです。ディオニュソスはフランスの宝ともいえるワインの神様で、セーヌ川の女神であるセクアナの父でもあります。オリンパスの山の神とつながる、多様な宗教を信仰する人々の大きなパーティを作り上げようというアイデアでした。何よりも愛のメッセージ、『包摂』のメッセージを送りたかったのであり、分断を和解させるセレモニーにしたかっただけです」と語っています。
大会組織委員会は誹謗中傷を非難し、監督らの支援表明
ブッチさんの弁護士は、「彼女は殺害や拷問、レイプを行うと脅迫され、反ユダヤ主義的、同性愛嫌悪的、性差別的、総体嫌悪的(体重に対する憎悪)な侮辱の標的にもなっています」「バーバラ・ブッチは自分自身や彼女が象徴するもの、彼女が支持するものに向けられたこの卑劣な憎悪を非難します。彼女は今日、フランス人であろうと外国人であろうと、これらの行為に対していくつかの訴えを起こしており、今後、彼女を脅迫しようとする者を訴追するつもりです」とコメントしています。
大会組織委員会は2日、一連の誹謗中傷を非難するとともに、芸術監督らを支援する考えを表明しています。
パリ市長「誤解はばかげている、パリは全ての自由の街」
一方、『祝祭』のシーンが『最後の晩餐』を侮辱していると右翼の評論家や宗教家たちが誤解していることについて、アンヌ・イダルゴパリ市長は「反発は不当でばかげている。私たち全員対全員の戦争に閉じ込めようとするすべての人々はくたばれ。パリはすべての自由の街であり、LGBTQI+の人々の避難所であり、人々が一緒に暮らす街です」と、ルモンド紙のインタビューで喝破しています。