その後、ミルクはサンフランシスコ市長のマスコーニ氏と共に暗殺されました。犯人はゲイの権利に反対していたダン・ホワイト市政執行委員です。任期途中で投げ出した執行委員への復帰が認められなかったことへの恨みという身勝手な動機でした。

 ゲイ当事者である石川大我参議院議員は前述の区議の発言に対し、ミルクの暗殺を例に出し解説しました。「(LGBTに対する)こうした差別は世界中で続いています。異性愛も同性愛も優劣はなく、多様な性のひとつ、というのが今の常識です。松村議員の発言はこうした昔からの差別意識を受け継ぐもので看過できません。ハーヴェイ・ミルクは同性愛に差別意識を持つ同僚議員に射殺されます。差別は人を殺すのだ、という自覚が松村議員には足りないと思います」

 エンターテインメントの世界でも反差別の動きは顕著です。私が字幕翻訳を担当する「LAW & ORDER:性犯罪特捜班」でも、ヘイトクライム(ある特徴を持つ人への偏見によって行 われる犯罪)を扱ったエピソードがありました。
ミルクが目指した社会の1日も早い実現を願わずにいられません。

市庁舎には随所にミルクの面影が・・・(撮影:編集部)

 ちなみに本作でナレーションを務めたハーヴェイ・ファイアスタインは舞台や映画で活躍する大物俳優です。脚本と主演を務めた舞台「トーチソング・トリロジー」は、のちに彼の主演で映画化されました。愛にあふれたチャーミングな作品なのでいつか紹介できたらいいな、と思います。

追記:11月27日はハーヴェイ・ミルクが銃弾に倒れてから45回目の命日です。彼にゆかりのあるサンフランシスコのカストロ地区では現在もその功績を称えています。

「ハーヴェイ・ミルク・ターミナル」と改称されたサンフランシスコ国際空港 第1ターミナル(撮影:編集部)

カストロ駅にあるHarvey Milk Plaza(撮影:編集部)

ハーヴェイ・ミルクの名を冠した小学校(撮影:編集部)

GLBT博物館所蔵のレインボーフラッグ(撮影:編集部)

カストロストリートのレインボーの横断歩道(撮影:編集部)

 

1984年製作/アメリカ
原題:The Times of Harvey Milk
配給:パンドラ

小泉真祐

小泉真祐

字幕翻訳家。会社員を経て映像翻訳の道へ。担当作品に「靴ひも」「スワン・ソング」「LAW & ORDER : 性犯罪特捜班」など。

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